排熱発電コンソーシアムより: 新しい用途は自動車の燃費向上とIOT向けセンサ電源
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こんにちは電気電子工学科の高木です。
研究テーマの排熱発電について、国内の関係者が定期的に集まるコンソーシアムに参加し、4件の講演を聴講してきました。その中で物質・材料研究機構が行った技術調査は、応用への技術動向を知るうえでとても有益でした。これまでは応用用途として、自動車の燃費向上、燃焼炉などからのエネルギー取り出しが提案されてきました。これに対し、センサと機械をつないで自動化するIoT(Internet of Things)への関心が急速に高まっており、排熱発電をセンサおよび電子回路用電源に応用展開する提案が活発化しています。
我々の身の回りには、自動車や船舶のエンジンやゴミ焼却炉など多くの熱源があります。その利用率は30%にとどまり、多くは使われないままの排熱となっています。排熱を発電に再利用するのが排熱発電で、サステイナブルなエネルギー基盤として期待されています。東京工科大学では、学内にあるコージェネに着目し、排熱発電を研究しています。
排熱発電の実用化に向け、国内の大学・公的な研究機関の20名以上の研究者と、約30社の国内メーカが集り、排熱発電コンソーシアムが結成されています。東京工科大学も2015年の6月より排熱発電コンソーシアムに加入しています。2月の末に第28回の排熱発電コンソ―シアムが開催され、会議に参加してきました。今回は4件の発表があり、その中で物質研究機構が調査した報告は、技術動向を知る上でとても有益でした。報告の中から、(1) 海外の研究動向、(2) 排熱発電の応用展開の内容について紹介します。
(1) 海外の研究動向
2000年までは特許数で日本がトップでした。その後は研究が停滞し、2015年度の特許数では、中国>アメリカ>日本>ドイツの順となっています。2014年度まではアメリカ>中国の順でしたが、2015年度は中国がトップとなり、両国は激しい開発競争を続けています。
(2) 応用展開
排熱発電の応用展開として、これまでは、図に示すように、エンジン排熱による自動車の燃費向上と、ゴミ焼却炉・コージェネなどからの大電力発電が提案されていました。現在、IoTによる自動化が、多くの分野で検討されています。例えば、化学プラントの製造ラインにセンサを付けて反応温度を測定し、インターネットを介してデータをコンピュータに集め、化学プラントの自動で運転するという具合です。化学プラントでは、反応により温度が高くなるので、その排熱発電をセンサおよび電子回路用電源に使おうという考えです。プラントが稼働して高温部がある限り発電でき、100V電源や電池が不要となります。
これまでの排熱発電コンソーシアムは、発電のための熱電素子に関する議論を中心に行なわれてきましたが、応用に対する議論が徐々に増えています。コージェネを使った排熱発電の実現に向け、研究を加速する必要があると強く感じました。
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