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2016年3月

2016年3月25日 (金)

排熱発電コンソーシアムより: 新しい用途は自動車の燃費向上とIOT向けセンサ電源

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こんにちは電気電子工学科の高木です。

研究テーマの排熱発電について、国内の関係者が定期的に集まるコンソーシアムに参加し、4件の講演を聴講してきました。その中で物質・材料研究機構が行った技術調査は、応用への技術動向を知るうえでとても有益でした。これまでは応用用途として、自動車の燃費向上、燃焼炉などからのエネルギー取り出しが提案されてきました。これに対し、センサと機械をつないで自動化するIoTInternet of Things)への関心が急速に高まっており、排熱発電をセンサおよび電子回路用電源に応用展開する提案が活発化しています。

我々の身の回りには、自動車や船舶のエンジンやゴミ焼却炉など多くの熱源があります。その利用率は30%にとどまり、多くは使われないままの排熱となっています。排熱を発電に再利用するのが排熱発電で、サステイナブルなエネルギー基盤として期待されています。東京工科大学では、学内にあるコージェネに着目し、排熱発電を研究しています。

排熱発電の実用化に向け、国内の大学・公的な研究機関の20名以上の研究者と、約30社の国内メーカが集り、排熱発電コンソーシアムが結成されています。東京工科大学も2015年の6月より排熱発電コンソーシアムに加入しています。2月の末に第28回の排熱発電コンソ―シアムが開催され、会議に参加してきました。今回は4件の発表があり、その中で物質研究機構が調査した報告は、技術動向を知る上でとても有益でした。報告の中から、(1) 海外の研究動向、(2) 排熱発電の応用展開の内容について紹介します。

(1) 海外の研究動向
2000年までは特許数で日本がトップでした。その後は研究が停滞し、2015年度の特許数では、中国>アメリカ>日本>ドイツの順となっています。2014年度まではアメリカ>中国の順でしたが、2015年度は中国がトップとなり、両国は激しい開発競争を続けています。

(2) 応用展開
排熱発電の応用展開として、これまでは、図に示すように、エンジン排熱による自動車の燃費向上と、ゴミ焼却炉・コージェネなどからの大電力発電が提案されていました。現在、IoTによる自動化が、多くの分野で検討されています。例えば、化学プラントの製造ラインにセンサを付けて反応温度を測定し、インターネットを介してデータをコンピュータに集め、化学プラントの自動で運転するという具合です。化学プラントでは、反応により温度が高くなるので、その排熱発電をセンサおよび電子回路用電源に使おうという考えです。プラントが稼働して高温部がある限り発電でき、100V電源や電池が不要となります。

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これまでの排熱発電コンソーシアムは、発電のための熱電素子に関する議論を中心に行なわれてきましたが、応用に対する議論が徐々に増えています。コージェネを使った排熱発電の実現に向け、研究を加速する必要があると強く感じました。

2016年3月19日 (土)

春の学会発表

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こんにちは電気電子工学科の天野です。

3月には様々な学会が各地で開催されます。学会での発表は研究室の大学院生にとって不可欠かつ重要な活動です。私の研究室から発表をする幾つかの学会の国内開催地は交通・宿泊などの事情から東京近郊のことが多いように思いますが、それ以外の各地で開催されるものも多数あります。東京近郊とそれ以外を交互に開催地としている学会もあります。

自分の指導する学生にはできるだけ東京近郊ではなく、各地の学会で発表するように指導することが多いです。

そうすれば、移動手段や宿泊の手配をしなければなりません。そこが副次的な狙いです。飛行機に乗ったことがない、宿の予約をしたことがない学生も、仕事や新婚旅行などでそれらの対応が必要になることも多いでしょう。ここで挑戦しておけば、そのときに慌てないで済みます。

このあたりは私自身が学生時代に旅行するような性格ではなかったことにも起因しています。振り返ってみれば、教員の指導で学会のため各地へ行きました。幾つか失敗もありましたが、それもよい経験となりました。とはいえ最近ではオンラインでたいへん便利に手配できますので、どれぐらいのハードルがあるかわかりませんね。

今年は私の研究室からは福岡で開催された学会へ参加する学生がありました。

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写真は会場の入り口の様子とポスター発表の準備の様子です。発表を無事に終え帰京しました。

2016年3月 8日 (火)

卒業生の活躍を学内合同企業セミナーで知る

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こんにちは電気電子工学科の天野です。

八王子キャンパスにて、学内合同企業セミナーが4日間、開催されます。ご来訪いただく企業(官公庁なども含む)の数は4日間でなんと498社! 学内最大の就活関連イベントとなります。

学生も、1時間以上前から並んでいます。

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例年、先頭集団に天野研の学生も加わっています。今年は最前列をほぼ独占していました。なにしろ千名以上の学生が集まるので、列の先頭と最後尾とではセミナーの活用度も大きく異なってきます。今年はその意味ではスタートは上々ですね。20163月卒の天野研の内定率は昨年に続いて100%となっています。並んでいた20173月卒予定の皆さんも、この機会4日間を最大限活かして、自分にあった企業と巡り会ってください。

私自身は開場前にできるだけ、過去に卒研室から学生が入社した企業のブースを訪問させていただいています(タイミングが合わずに訪問できないこともあります。その際はご容赦ください)。このとき、卒業生が不評だったりしないかと不安もあるのですが、「○○さんは××の部署で活躍している」といったお話をお聞きすることができると、たいへん嬉しく、教員のやりがいを感じるところでもあります。

2016年3月 3日 (木)

FPGAを用いる実験の準備中

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こんにちは電気電子工学科の天野です。

現在、来年度前期の実験の準備をしています。この実験ではFPGAを用います。コンピューターやマイコン(以降、まとめてCPU)に詳しくても、FPGAPLD)を知っている、使ったことがあると言う人は少ないと思います。

Thetaplus_20160229134332899_2

上の写真は実験準備のため、納品された数十個のFPGAボードを動作確認のために取り出したところです。このようにFPGAは見た目は通常のCPUと相違ありません。使い勝手も下のようなソースコードで動くのでCPUと相違を感じにくいところもあります。

module Tflipflop(clk, t, q);

  input clk, t;
  output p;
  reg buf;

  always @(posedge clk) begin
  if (t == 1’b1) begin
  buf = ~buf;
  end
  end
         
 assign q = buf;
endmodule


ところが、FPGACPUとはまったく違うというか、ある意味で真逆の存在です。

CPU
は集積回路で、中には多数の(固定された)電子回路があります。その電子回路の構成によって、メモリーから命令やデータを読み出して解釈して実行するといった機能を実現しています。このため、CPUを使えばプログラムを与えることで、様々な動作をさせることができます。

FPGAも集積回路で、中には多数の電子回路がありますが、それらの電子回路は小さなブロックに分かれていて、そのブロック間の配線を変更可能です(固定ではない)。上記のようなソースコードはその配線を定義しています。この定義に従って配線された(ブロック間の結線)ことによって生成される電子回路を利用できる仕組みです。ややこしくなるかもしれませんが、これを利用してFPGA内にCPUを作り出すことも可能です。

例えばコード例にある「assign q = buf」はCPU用の通常のプログラミング言語風に解釈すれば「変数qへ変数bufの値を代入する」という処理のようですね。しかし、FPGAではbufというレジスター(これもプログラムの指定で作り上げた電子回路で実現される)とモジュールの出力先q(おそらくはFPGAの入出力pin)を結線する、というイメージとなります。代入ではないので、bufの値は常にqへと出力され続けています。

こう考えてみるとFPGAは、
・部品を集めることなく電子回路を構成できる
・半田ごてを使ったりせずに電子回路を作り上げることができる
・上記ができるとしても、そんな方法ではとても間に合わないような大規模な電子回路を作り上げることができる

といった、とても便利な道具です。いわば専用ICを自前で作るための道具と言えます。

 

  変更 速度 コスト(小規模) コスト(大規模)
CPU
FPGA
専用IC × ×

 

上の表はざっくりと適性をまとめてみたものです。適材適所ですから、どちらがよいかというよりも、この用途ではどれが最適なのかという議論になります。

FPGACPUと同じように誰でも簡単に利用できます。CPUだけでなくFPGAもマスターすれば、全方位的な技術を有することになります。近年ではCPU内部にFPGAを埋め込もうという動きもあるようですから、FPGAに関する技術習得はこれから有益である可能性が高いでしょう。

実験ではこのFPGAについて、基礎的なところを実際に試しながら学びます。

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