「人」のサステイナブル プラズマ殺菌の実験を行いました
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こんにちは、電気電子工学科の高木です。
4月に着任して以来、排熱発電とモータ制御についての研究環境を整えてきました。3つ目のテーマとして、安全安心を通して「人」のサステイナブルに貢献するプラズマ殺菌を検討しています。プラズマというのは、空気などの気体に高電圧を印加して作られるイオンと電子の集団で、寒冷地の空を彩るオーロラや蛍光体の内部ではプラズマの発光が見えています。
プラズマの発生装置を使って、一般(無害)大腸菌を培養するサンプルの一部にプラズマを照射し、殺菌の効果を調べました。結果として、照射部では大腸菌が成長せず、プラズマ殺菌の効果を裏付ける結果が得られました。プラズマの解析結果と合わせ、学会での発表を目指します。
現在、食品、医療関連の殺菌には、高温殺菌、塩素などの薬剤を使った殺菌が行われています。高温殺菌では、殺菌対象全体を高温するために、多くのエネルギーを消費します。また、樹脂材など、高温加熱できない材料もあります。塩素などによる殺菌では、薬剤を大量に使用するだけでなく、薬剤が残留する可能性もあります。これに対して、プラズマ殺菌では、薬剤が不要です。また、対象エリアにプラズマを照射するだけで殺菌でき、高温加熱に比べエネルギー消費量を大幅に低減できます。人への安全安心をもたらし、環境にも優しい方法です。
こうしたメリットが期待できることから、プラズマ殺菌の効果を確認する実験を行いました。写真は使用したプラズマ発生装置((株)ウェル製)で、左側の2つの筐体はプラズマを発生させるための電源です。
プラズマは右側にあるロケット状の金属筒から放出されます。この金属筒の中央には、電源に接続された電極が入っています。金属の筒はアースに接続されており、中央の電極と金属筒との間に、高電圧をかけてプラズマを生成します。金属筒には、1分間に20Lの空気が供給され、プラズマによって作られた酸素原子や窒素原子(活性種と呼ばれます)が空気の流れとともに金属筒の先端から放出されます。写真にように、金属筒の先端から活性種が放出され、発光しています。
殺菌効果を調べるサンプルは、写真の寒天培地に一般(無害)大腸菌を塗布して作成しました。
この中央部に、金属筒から放出される活性種を照射しました。3日間放置し、大腸菌を培養した結果、ほぼ全面が白くなり大腸菌が培養されました。しかしながら、活性種の照射部は透明な寒天状のままで、大腸菌の成長が抑制されることが確認できました。
今回の実験で殺菌の効果が確認できたことから、大気圧プラズマ装置を導入し、プラズマ殺菌の定量評価を始めることにしました。また、プラズマシミュレーションソフトPEGSUS(Plasma Enhanced materials processing
and rarefied GAS dynamics Unified Simulation tools)を使える環境も整いました。プラズマが生成され、活性種がノズルから放出される輸送過程の解析にも着手します。一連の結果をまとめ、半年から1年後の学会発表を目指します。
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