「赤外線レーザーの応用」について企業との共同研究を始めました
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こんにちは、電気電子工学科の高木です。
4月に東京工科大学に着任してから、約4ヶ月が過ぎ、大学での仕事にも慣れてきました。
以前、企業で「赤外半導体レーザ(以下、赤外LD)」を使った生体計測の研究をしていました。今回、赤外LDを生体計測以外の応用に展開することになり、国内外に事業展開している大手電機メーカーと共同開発契約を締結し、研究を開始しました。
この電機メーカーが開発しているのは、人間が吐き出す呼気中の微量物質を、赤外半導体レーザで測定し、健康状態や運動状態を調べる装置です。呼気は、その90%以上が窒素、二酸化炭素などの大気ガスで構成されていますが、残り数%にアセトアルデヒド、アセトンなどの微量物質が含まれています。これを測定することで身体の状態を調べることができ、呼気診断と呼ばれています。飲酒運転を調べるのに、呼気中のアルコールの濃度を調べるのもその一つです。
呼気診断の測定方法は他のガスにも使えます。図は、赤外LDを使った微量ガス測定方法です。測定したいガスに赤外LDを照射し、入射前後の光強度を比較することで光の吸収量を求め、光を吸収した物質の濃度を求めます。測定に赤外LDを使うのは、(1)波長が赤外であること、(2)レーザーで伝搬距離が長いことからです。
(1)として、光の波長は短い方から紫外線、青色、黄色、赤色の可視光、赤外線となります。赤外線は人の目には見えませんが、可視光に比べて測定ガスでの吸収量が多く、測定感度が高くなります。
(2)では、レーザ光は、一般の光に比べ、広がることなく遠くまで伝搬します。レーザポインタの光が遠くまで届くのと同じです。測定ガスの両側に鏡を置き、測定ガス中を何度も往復させて吸収量を増やすことで、ppb(10億分の1)~ppm(100万分の1)の高感度測定が可能となります。
呼気以外の応用先として考えられるのは、大気中の微量ガス測定です。火山噴火で放出される二酸化硫黄(SO2)、自動車から排出される窒素化合物(NOx)、工場から排出されるアンモニア(HN3)などの測定も可能です。こうしたガスの濃度を測定することは、大気環境を知り、改善していく上でとても重要です。
東京工科大学と大手電機メーカーとの共同研究で、環境ガス測定を含めた赤外LDの応用展開を進めていきます。
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